取締役は会社から経営を託された立場です。だからこそ、会社と利益がぶつかる場面では手続が要求され、任務を怠れば責任を負います。競業取引・利益相反取引・報酬・株主代表訴訟がセットで出題されます。
会社と役員の関係は委任に関する規定に従うの。
だから取締役は善管注意義務を負う。
加えて、法令・定款・株主総会決議を遵守し、会社のため忠実に職務を行う義務もあるわ。
忠実義務は善管注意義務とは別個の、より高度な義務なのでしょうか。
判例は、忠実義務は善管注意義務を敷衍し明確化したものにとどまり、別個の高度な義務を課したものではないとしているわ。
同質説ね。
会社の取締役が、こっそり自分でも同じ商売を始めたらどうなるの? それって反則じゃん?
競業取引ね。
自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をするには、重要な事実を開示して承認を受ける必要があるの。
取締役会設置会社なら取締役会、それ以外なら株主総会。
承認を得ずに行った場合の効果を確認させてください。
取引によって取締役または第三者が得た利益の額が、会社に生じた損害の額と推定されるわ。
損害額の立証は難しいから、会社を助ける規定なの。
うぅ〜ん、会社と取締役が直接売り買いするのは、いいの?
それが利益相反取引。
会社の土地を取締役が安く買う、というような直接取引だけでなく、会社が取締役の借金を保証するといった間接取引も含まれる。
どちらも承認が必要よ。
承認をもらったのに会社が損しちゃったら、誰が責任を取るの?
そこが厳しいところ。
取引をした取締役、取引を決定した取締役、承認決議に賛成した取締役は、任務を怠ったものと推定されるわ。
しかも自己のために直接取引をした取締役の責任は無過失責任で、一部免除もできないの。
報酬についても確認させてください。
取締役が自分で決められては、お手盛りになりますね。
そのとおり。
だから報酬等は定款または株主総会の決議で定めるの。
実務では総額の上限だけ決めて、個別配分は取締役会に一任することが多いわ。
判例もこれを適法としているの。
…いったん決まったお給料を、あとから勝手に下げるのはダメだよね?
そう。
判例は、報酬額が具体的に定まれば会社と取締役の間の契約内容になるから、取締役の同意なく一方的に減額できないとしているわ。
でもさ、株主総会が動いてくれなかったら、悪いことした取締役が野放しになっちゃわない?
だから株主代表訴訟があるの。6か月前から引き続き株式を有する株主は、まず会社に対し書面で提訴を請求し、会社が60日以内に訴えを提起しないときは、自ら会社のために訴えを提起できるわ。
持株数の要件はありませんね。
1株の株主でも提起できる単独株主権。
ただし公開会社の場合は6か月の保有継続が必要、と。
整理が正確ね。
なお役員等が第三者に責任を負うのは、職務を行うにつき悪意または重大な過失があった場合。
軽過失では第三者に対する責任は生じないわ。
確認クイズ
取締役の義務および責任に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 取締役が法令所定の承認を受けずに競業取引をした場合、当該取引によって取締役または第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定される。
- 取締役の報酬は、定款または株主総会の決議によって定める必要はなく、取締役会が自由に決定することができる。
- 役員等が第三者に対して損害賠償責任を負うのは、その職務を行うについて軽過失があった場合を含む。
- 株主代表訴訟を提起するには、総株主の議決権の100分の3以上を有していることが必要である。
こたえを見る
正解: 1. 取締役が法令所定の承認を受けずに競業取引をした場合、当該取引によって取締役または第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定される。
選択肢1が正しい。承認を欠く競業取引では、取締役または第三者が得た利益の額が会社の損害額と推定される。選択肢2は誤り。取締役の報酬等は定款または株主総会の決議で定めなければならない(お手盛り防止)。選択肢3は誤り。役員等の第三者に対する責任は、職務を行うについて悪意または重大な過失があった場合に限られる。選択肢4は誤り。株主代表訴訟は単独株主権であり、持株数の要件はない(公開会社では6か月前からの保有継続が必要)。