看板に何と書くかは自由か。登記していない事実を、取引相手にぶつけられるか。商号と商業登記は、外から見た「信頼」をどこまで守るかというテーマです。名板貸人の責任と、登記の2つの公示力を押さえます。
先生、お店の名前って、好きにつけていいのぉ?
原則は自由。
これを商号自由の原則というの。
商人は自分の氏名でも、まったく別の名称でも商号にできるわ。
ただ、無制限ではないはずです。
会社は商号中に会社の種類を示す文字を用いなければならない、という規定がありますね。
そう。
株式会社なら「株式会社」の文字が必要。
逆に会社でない者が、会社だと誤認されるおそれのある文字を使うことは禁止されているわ。
それに、有名店とそっくりな名前をつけるのもダメだよね? 紛らわしいじゃん?
不正の目的をもって、他の商人と誤認されるおそれのある名称・商号を使うことは禁止。
侵害された商人は使用の停止や予防を請求できるの。
先生、質問があります。
看板だけ貸すというのはどうなりますか。
名前を貸した側は無関係で済むのでしょうか。
そこが名板貸人の責任。
自己の商号を使って営業することを他人に許諾した商人は、その商人が営業していると誤認して取引した相手に対し、その取引によって生じた債務を、名前を借りた者と連帯して弁済する責任を負うわ。
マジで!? 名前貸しただけで借金まで背負うの…?
外観を作り出した者は責任を負う。
外観法理ね。
ただし取引の相手方が誤認していなかった場合、つまり悪意のときは保護されない。
判例は重大な過失も悪意と同視しているわ。
…登記のほうは、どういう意味があるの? ましろ、登記って「お知らせ掲示板」みたいなものだと思ってる。
その比喩、悪くないわ。
効力は2つ。
①登記すべき事項は、登記の後でなければ善意の第三者に対抗できない。
掲示板に貼っていないことは、知らない人には言えない。
それが消極的公示力ですね。
逆に貼った後は、知らない人にも主張できる。
ええ、それが積極的公示力。
ただし第三者が正当な事由によって登記を知らなかったときは対抗できない。
災害で官報が届かなかった、というような客観的障害を指すの。
単に忙しくて見ていない、では正当事由にならないわ。
要は、うっかり見逃したのは自己責任ってこと?
そういうこと。
もうひとつ、故意または過失で不実の登記をした者は、その事項が不実であることを善意の第三者に対抗できない。
嘘の掲示を信じた人が守られるのよ。
確認クイズ
商業登記の効力に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 登記すべき事項は、登記の前であっても、これをもって善意の第三者に対抗することができる。
- 登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
- 登記の後であれば、第三者が正当な事由によって登記があることを知らなかった場合でも、常にこれを対抗することができる。
- 故意または過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることを、善意の第三者に対抗することができる。
こたえを見る
正解: 2. 登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
選択肢2が正しい。登記すべき事項は、登記の後でなければ善意の第三者に対抗できない(消極的公示力)。選択肢1は誤りで、内容が逆である。選択肢3は誤り。登記後であっても、第三者が正当な事由によって登記があることを知らなかったときは対抗できない。選択肢4は誤り。故意または過失により不実の登記をした者は、不実であることを善意の第三者に対抗できない。