民法の第4編は家族に関するルールです。結婚はどう成立し、どんな効果が生じるのか。離婚のしかた、子どもとの法律上の親子関係、そして親権や扶養まで。生活に身近でありながら要件が細かい親族法を整理します。
結婚って、式を挙げたら成立するのぉ?
いいえ、ましろさん。婚姻は婚姻届を提出して受理されることで成立するの(739条)。
式ではなく届出、つまり法律婚主義よ。
婚姻の実質的要件として、婚姻意思の合致、婚姻適齢に達していること、重婚でないこと、近親婚でないことなどがありますね。
婚姻適齢は男女とも18歳に統一されました。
つむぎさん、正確ね。
成年年齢と婚姻適齢がともに18歳になったのは近年の改正点。
婚姻の効果として、夫婦は同居し互いに協力扶助する義務を負い(752条)、日常家事債務は夫婦が連帯して責任を負う(761条)わ。
離婚はどうやってするの? やっぱり裁判?
いちばん多いのは協議離婚(763条)。
夫婦の合意と離婚届の提出でできるの。
話がまとまらなければ調停、それでもダメなら裁判離婚(770条)ね。
裁判離婚は法定の離婚原因が必要ですね。
不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、その他婚姻を継続し難い重大な事由。
『回復の見込みがない強度の精神病』は、2026年4月1日施行の改正で削られました。
そのとおり。
離婚のとき、一方は相手に財産分与を請求できるわ(768条)。
婚姻中に協力して築いた財産を清算する趣旨よ。
家庭裁判所に請求できる期間は、同じ改正で、離婚の時から2年だったのが5年に伸びたわ。
子どもとの関係も、法律で決まってるのぉ?
実子には、婚姻中に生まれた嫡出子と、そうでない子がいるの。
改正で、妻が婚姻中に懐胎した子だけでなく、婚姻前に懐胎して婚姻後に生まれた子も夫の子と推定されるようになったわ(772条)。
婚姻成立から200日以内なら婚姻前の懐胎、200日経過後や離婚等から300日以内なら婚姻中の懐胎と推定するの。
血がつながってなくても親子になれる『養子』は、種類があるって聞いたよ。
そう。普通養子は実親との関係を残したまま養親とも親子になるの。
一方特別養子は実親との親族関係が原則終了する、より強い縁組よ(817条の2以下)。
改正で対象年齢が引き上げられ、原則として審判の申立て時に15歳未満の子が対象になったの。
子に対する監護教育の権利義務が親権ですね(820条)。
父母の婚姻中は双方が親権者で、親権は共同して行う。
離婚時は、前は必ず一方を親権者と定めていましたが、2026年4月1日施行の改正で、父母の双方または一方を親権者と定めることになりました(819条)。
つむぎさん、まとめてくれてありがとう。
最後に扶養(877条)。
直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養する義務を負う。
家族の助け合いを法が支えているのよ。
確認クイズ
親族に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 婚姻は、婚姻の意思の合致と結婚式の挙行によって成立する
- 特別養子縁組が成立すると、養子と実方の父母およびその血族との親族関係は原則として終了する
- 協議上の離婚をするには、必ず家庭裁判所の調停を経なければならない
- 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしても、他方はその債務について責任を負わない
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正解: 2. 特別養子縁組が成立すると、養子と実方の父母およびその血族との親族関係は原則として終了する
選択肢2が正しい。817条の9により、特別養子縁組が成立すると実方の父母およびその血族との親族関係は原則として終了する。選択肢1は誤り。婚姻は婚姻届の提出・受理によって成立する(739条)。選択肢3は誤り。協議離婚は当事者の合意と届出によってでき、調停は必須ではない(763条)。選択肢4は誤り。日常家事債務については夫婦が連帯して責任を負う(761条)。
2022年〜2026年の改正で加わった決まり:親子関係と、離婚後の子の養育
先生、家族法は改正が続いていますね。
まず、2022年12月と2024年4月に施行された分を確認させてください。
2022年12月16日には、親権者の懲戒権の規定が削除されたわ。
代わりに、親権を行う者は子の人格を尊重し、体罰など子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない、と定められたの(821条)。
そして2024年4月1日。
女性の再婚禁止期間を定めていた旧733条が削除されて、再婚禁止期間はなくなったの。
嫡出推定も見直されたわ。
子を懐胎してから出生するまでの間に母が2回以上婚姻していたときは、出生の直近の婚姻の夫の子と推定する(772条3項)。
前の婚姻の解消から300日以内に生まれた子でも、母が再婚した後に生まれたなら、再婚後の夫の子と推定されるのよ。
推定されたお父さんが、本当は違うっていうときは、誰が争えるの?
嫡出否認の訴えね。
前は夫だけが起こせたけれど、改正で、父のほか、子と母、そして再婚の場合の前夫にも否認権が認められたの(774条)。
出訴期間も、1年以内から3年以内に伸びたわ(777条)。
2026年の4月からは、離婚したあとの子どものことが変わったって聞いたのぉ。
そうよ、ましろさん。
まず親の責務が条文になったの。
父母は、婚姻しているかどうかにかかわらず、子の人格を尊重して養育し、子が自分と同じ程度の生活を維持できるよう扶養しなければならない(817条の12)。
そして離婚後の親権。
協議離婚では、協議で父母の双方または一方を親権者と定めるわ(819条1項)。
協議が調わないときや裁判離婚のときは、裁判所が定めるのですね。
ええ。
裁判所は子の利益のために、双方とするか一方とするかを判断するの。
ただし、父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるときや、DVのおそれなどで父母が共同して親権を行うことが困難なときは、必ず一方を親権者と定めなければならないわ(819条7項)。
二人とも親権者だったら、何でも二人で決めなきゃいけないの?
原則は共同よ。
でも、監護や教育に関する日常の行為と、子の利益のため急迫の事情があるときは、一方が単独で親権を行えるの(824条の2)。
養育費を払ってもらえないときは、どうなるのぉ?
二つの手当てができたわ。
ひとつは法定養育費。
養育費の取決めをしないまま協議離婚をしても、離婚の時から引き続き子を主に監護する父母は、他方に、一定の額の養育費を請求できるの(766条の3)。
額は法務省令で決まっていて、子1人当たり月額2万円よ。
もうひとつは先取特権。
養育費などの債権は、子1人当たり月額8万円までの部分に一般の先取特権が付いて、ほかの債権者より先に弁済を受けられるようになったわ(306条・308条の2)。
同じ改正で、財産分与を家庭裁判所に請求できる期間が2年から5年に伸び(768条2項)、夫婦間の契約をいつでも取り消せるという旧754条も削除されましたね。
つむぎさん、そのとおり。
施行日と条文の番号を、セットで押さえておいてね。
確認クイズ
2026年4月1日施行の改正後の民法(親族)に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 父母が協議上の離婚をするときは、必ず父母の一方を親権者と定めなければならない
- 父母の双方が親権者である場合、子の監護および教育に関する日常の行為であっても、必ず父母が共同して行わなければならない
- 養育費の取決めをせずに協議上の離婚をした場合でも、離婚の時から引き続き子を主として監護する父母は、他方に対し、一定の額の養育費(法定養育費)を請求することができる
- 財産分与について家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できるのは、離婚の時から2年以内に限られる
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正解: 3. 養育費の取決めをせずに協議上の離婚をした場合でも、離婚の時から引き続き子を主として監護する父母は、他方に対し、一定の額の養育費(法定養育費)を請求することができる
選択肢3が正しい。法定養育費の制度である(766条の3。額は子1人当たり月額2万円)。選択肢1は誤り。協議で父母の双方または一方を親権者と定める(819条1項)。選択肢2は誤り。監護および教育に関する日常の行為は、単独で親権を行使できる(824条の2第2項)。選択肢4は誤り。請求できる期間は、離婚の時から5年に伸長された(768条2項)。