契約がなくても、法律が債権債務を発生させる場合があります。頼まれてもいないのに他人のために世話を焼く事務管理と、法律上の原因なく得た利益を返す不当利得。おせっかいと不公平を法がどう扱うのか、要件と効果を押さえます。
先生、隣の家の郵便物が雨に濡れそうだったから、勝手に取り込んであげたの。
これって法律的にどうなるの?
それこそ事務管理よ(697条)。
義務がないのに他人のために事務の管理を始めること。
ジャスミンさんの善意は、法律上ちゃんと位置づけられているの。
要件を整理します。
義務がないこと、他人のためにする意思(管理意思)があること、他人の事務であること、そして本人の意思や利益に反することが明らかでないこと。
この理解で合っていますか?
完璧よ、つむぎさん。
管理者は本人の意思に従い、最も本人の利益に適合する方法で管理する義務を負う(697条)。
始めた以上、勝手に投げ出せないの。
取り込むのにかかった費用は、返してもらえるのぉ?
有益費の償還請求ができるわ(702条)。
本人のために有益な費用を支出したら、本人に請求できる。
でも原則として報酬は請求できないの。
あくまで善意の行為だからね。
報酬はもらえないんだ。
ちょっと残念だけど、まあそうか。
次が不当利得(703条)。
法律上の原因なく他人の財産や労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益を返還する義務を負うの。
善意の受益者は現に利益を受けている限度(現存利益)で返還すれば足り、悪意の受益者は利益に利息を付して返還し、なお損害があれば賠償責任を負う(703条・704条)、という理解で合っていますか?
つむぎさん、正確ね。
善意なら現存利益、悪意なら利息付き+損害賠償。
この善意悪意での差が頻出よ。
借金でもないのに、うっかり払っちゃったお金は取り戻せるのぉ?
非債弁済ね。
債務がないのに弁済した場合、原則は返還請求できるけど、債務がないことを知りながら弁済したときは返還請求できない(705条)。
知ってて払ったなら自業自得というわけ。
じゃあさ、法律に反することのために渡したお金は? 例えば賭博の借金とか。
それが不法原因給付(708条)。
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求できないの。
自ら不法に関与しておいて返せとは言えない、という考え方よ。
ただし不法な原因が受益者側にのみあるときは返還請求できるわ。
『クリーンハンドの原則』の表れですね。
自らの手が汚れている者は法の助力を求められない、と。
確認クイズ
事務管理および不当利得に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 事務管理を行った管理者は、本人に対して費用の償還のほか、当然に報酬を請求することができる
- 債務が存在しないことを知りながら弁済した者は、給付したものの返還を請求することができない
- 善意の受益者は、受けた利益に利息を付して返還しなければならない
- 不法な原因のために給付をした者は、常にその給付したものの返還を請求することができる
こたえを見る
正解: 2. 債務が存在しないことを知りながら弁済した者は、給付したものの返還を請求することができない
選択肢2が正しい。705条のとおり、債務のないことを知って弁済した者は返還を請求できない。選択肢1は誤り。事務管理では有益費の償還は請求できるが(702条)、報酬は請求できない。選択肢3は誤り。利息を付して返還するのは悪意の受益者であり(704条)、善意の受益者は現存利益の返還で足りる(703条)。選択肢4は誤り。不法原因給付は原則として返還請求できない(708条)。