もっとも身近な契約が売買です。手付を打つと何が起きるのか、買った物が契約と違ったらどう救済されるのか。改正で『瑕疵担保責任』から『契約不適合責任』へと大きく変わった分野を、贈与とあわせて押さえます。
先生、家を買うとき『手付』を払うでしょ? あれって何のためにあるの?
民法が原則とするのは解約手付よ(557条)。
相手が履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主は手付の倍額を現実に提供して、契約を解除できるの。
『相手方が履行に着手した後』は解除できないのですよね。
自分が着手していても、相手が未着手なら解除できる、という理解で合っていますか?
そのとおり、つむぎさん。
基準は『相手方の』履行の着手。
ここは頻出よ。
次が改正の目玉、契約不適合責任。
『瑕疵担保責任』って昔の言葉だよね? 今は名前が変わったのぉ?
よく知っているわね。
現行法では、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、売主は契約不適合責任を負うの。
債務不履行責任の一種として整理されたわ。
買主の救済は4つですね。
追完請求(562条)、代金減額請求(563条)、損害賠償請求、そして契約の解除(564条)。
完璧よ。
種類・品質の不適合を知った買主は、その不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないと、原則として権利を失う(566条)。
この通知期間1年が超頻出。
1年ね! でも数量が足りないときも1年なの?
いいところに気づいたわね。
数量の不適合と権利の不適合には、この1年の通知期間の制限は適用されないの。
種類・品質だけよ。
引っかけ注意ね。
危険の移転についても改正がありました。
引渡し後に当事者双方の責めに帰せない事由で目的物が滅失・損傷したときは、買主は追完請求等ができず、代金支払も拒めない(567条1項)。
そう、引渡しで危険が移転するの。
それと他人物売買も有効で、売主は権利を取得して買主に移転する義務を負う(561条)。
移転できなければ債務不履行の問題になるわ。
贈与……タダであげる約束は、あとで『やっぱりやめた』ってできるのぉ?
書面によらない贈与なら、各当事者は解除できるの(550条)。
ただし、履行が終わった部分は解除できない。
書面による贈与は原則解除できないわ。
この対比を押さえて。
確認クイズ
売買および贈与に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 解約手付が交付された場合、買主は、売主が履行に着手していなくても、自らが履行に着手した後は契約を解除できない
- 引き渡された目的物が種類または品質に関して契約に適合しない場合、買主はその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、原則として権利を失う
- 他人の権利を目的とする売買契約は、その権利が他人に属することを理由として無効である
- 書面によらない贈与は、既に履行が終わった部分についても解除することができる
こたえを見る
正解: 2. 引き渡された目的物が種類または品質に関して契約に適合しない場合、買主はその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、原則として権利を失う
選択肢2が正しい。566条のとおり、種類・品質の契約不適合は知った時から1年以内の通知を要する。選択肢1は誤り。解除できなくなるのは『相手方が』履行に着手した後であり、自らの着手は妨げにならない(557条)。選択肢3は誤り。他人物売買も有効で、売主は権利取得・移転義務を負う(561条)。選択肢4は誤り。書面によらない贈与でも、履行の終わった部分は解除できない(550条ただし書)。