ここから契約各論の入口、契約総論です。契約はどうやって成立するのか、双務契約で相手が履行しないとき自分の履行を拒めるのか、第三者に直接権利を与える契約とは。そして現代取引に不可欠な定型約款のルールを見ていきます。
契約って、いつ成立するのぉ? ハンコを押した瞬間?
いい質問ね、ましろさん。
契約は申込みと承諾という意思表示の合致で成立するの(522条1項)。
原則として書面は不要よ。
改正で、承諾の意思表示は到達した時に効力を生じる到達主義に統一されましたね。
旧法の発信主義(旧526条1項)は削除された。
つむぎさん、そのとおり。
契約の効力発生も到達主義(97条1項)に一本化されたわ。
次に、双務契約で大事な武器。
武器? なんかバトルっぽい! 何それ?
同時履行の抗弁権よ(533条)。
双務契約で、相手が履行の提供をするまで、自分の履行を拒める権利。
売買なら『代金くれるまで商品渡さない』と言えるの。
うぅ〜ん、それって留置権と似てるのぉ?
鋭いわね、ましろさん。
似ているけど違うの。
同時履行の抗弁権は同一の双務契約から生じた債権同士の関係、留置権は物を留置する物権。
効果も対象も違うわ。
第三者のためにする契約についても確認したいです。
当事者以外の第三者に直接権利を取得させる契約(537条)ですね。
そう、第三者のためにする契約。
第三者の権利は、その第三者が債務者に受益の意思表示をした時に発生するの(537条3項)。
生命保険の受取人指定などが典型例よ。
ねぇ、ネット通販の『利用規約に同意する』ってやつ、誰も全部読まないよね? あれって契約なの?
現代的な論点ね。
それが定型約款(548条の2)。
定型取引で、約款を契約内容とする合意をするか、あらかじめ約款を契約内容とする旨を相手に表示していれば、個別条項に合意したものとみなし合意されるの。
ただし、相手の権利を制限し義務を加重する条項で、信義則に反して相手の利益を一方的に害するものは合意しなかったものとみなされる(548条の2第2項)。
無制限ではないのですね。
そう。
それに約款の変更も、相手の一般の利益に適合するか、契約目的に反せず変更が合理的なら、個別合意なしに変更できる(548条の4)。
この定型約款は近年の頻出テーマよ。
確認クイズ
契約総論に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 隔地者間の契約における承諾の意思表示は、これを発信した時に効力を生じる
- 定型約款を契約の内容とする旨の合意があっても、相手方が各条項を現実に認識していなければ個別条項に合意したとはみなされない
- 第三者のためにする契約において、第三者の権利は、第三者が債務者に対して受益の意思表示をした時に発生する
- 双務契約においては、相手方が履行の提供をする前であっても、自己の債務の履行を拒むことはできない
こたえを見る
正解: 3. 第三者のためにする契約において、第三者の権利は、第三者が債務者に対して受益の意思表示をした時に発生する
選択肢3が正しい。537条3項により、第三者の権利は債務者に対する受益の意思表示の時に発生する。選択肢1は誤り。承諾は到達主義により到達時に効力を生じる(97条1項)。選択肢2は誤り。組入要件を満たせば各条項を現実に認識していなくてもみなし合意が成立する(548条の2)。選択肢4は誤り。同時履行の抗弁権により、相手が履行を提供するまで自己の履行を拒める(533条)。