借金を抱えた債務者が、財産を安く売り飛ばしたり、タダで贈与したりして、債権者の取り分を減らしてしまう。こうした『責任財産を減らす行為』を裁判で取り消させるのが詐害行為取消権です。要件・行使方法・期間制限を、代位権との違いを意識して押さえましょう。
先生、さっきの代位権と、詐害行為取消権って何が違うの? どっちも他人の財産の話じゃん?
いい比較ね。
代位権は債務者が『使わない権利』を代わりに行使する。詐害行為取消権は、債務者が『してしまった悪い処分』を取り消して財産を取り戻すの(424条)。
攻めの度合いが違うわ。
要件を挙げます。
被保全債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じていること、債務者が債権者を害することを知って行為をしたこと(詐害の意思)、そして受益者も債権者を害することを知っていたこと。
この理解で合っていますか?
よく整理できたわ、つむぎさん。
ポイントは詐害性と、債務者・受益者双方の悪意。
受益者が善意なら取り消せないの。
財産権を目的としない行為(婚姻や養子縁組など)は対象外よ。
取り消すって……誰を相手に裁判するのぉ? 債務者?
そこが重要。
被告は受益者(または転得者)で、債務者は被告にならないの(424条の7)。
ただし債務者に訴訟告知をしなければならないわ。
え、悪いことした本人が被告じゃないの? 変なの!
面白いでしょう。
そして必ず裁判上で行使すること。
代位権が裁判外でも行使できたのと対照的ね。
金銭の支払や動産の引渡しは、債権者への直接の引渡しを請求できる(424条の9)。
効果についても改正で明確になりました。
認容判決の効力は、債務者およびそのすべての債権者に及ぶ(425条)。
旧法の相対的取消しから変わった点ですね。
そのとおり。
他の債権者も取り戻された財産から満足を受けられる。
ただし取り消した債権者に優先権が生じるわけではないわ。
いつまでに裁判しないといけないのぉ? ずっと後でもいいの?
期間制限があるわ(426条)。
債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年、行為の時から10年で、訴えを提起できなくなる。
この2年・10年は必ず覚えて。
2年と10年ね。
よっしゃ、代位権にはこういう期間制限がないってことも一緒に覚えとく!
確認クイズ
詐害行為取消権に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 詐害行為取消権は、裁判外で受益者に意思表示することによっても行使できる
- 詐害行為取消しの訴えの被告は債務者であり、受益者を被告とすることはできない
- 受益者が行為の時に債権者を害することを知らなかった場合、債権者は詐害行為を取り消すことができない
- 詐害行為取消権は、債権者が詐害行為を知った時から10年を経過すると行使できなくなる
こたえを見る
正解: 3. 受益者が行為の時に債権者を害することを知らなかった場合、債権者は詐害行為を取り消すことができない
選択肢3が正しい。424条1項ただし書により、受益者が善意であれば取り消すことができない。選択肢1は誤り。詐害行為取消権は必ず裁判上で行使する(424条1項)。選択肢2は誤り。被告は受益者(転得者に対するときは転得者)であり、債務者は被告とならない(424条の7)。選択肢4は誤り。期間制限は債権者が詐害の事実を知った時から2年、行為の時から10年である(426条)。