お金を貸したのに相手が返してくれない。しかもその相手は、他人にお金を貸しているのに取り立てようとしない――。そんなとき、債権者が債務者に代わってその権利を行使できるのが債権者代位権です。要件と行使範囲、そして登記請求権への転用を見ていきます。
うぅ〜ん、債権者代位権って、他人の財布に手を突っ込むみたいで不思議なのぉ。
面白い喩えね、ましろさん。債権者代位権は、債権者が自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を代わって行使する制度なの(423条)。
要件を整理します。
第一に被保全債権が存在すること、第二に債権保全の必要性、すなわち債務者の無資力。
第三に、代位する権利が債務者の一身専属権や差押えを禁じられた権利でないこと。
この理解で合っていますか?
完璧よ。
付け加えると、被保全債権は原則として履行期が到来していることが必要(423条2項)。
ただし保存行為は期限前でもできるわ。
無資力……ってことは、相手にお金があったら使えないの?
原則はそうよ。
金銭債権の保全では無資力要件が必要。
債務者に十分な資力があれば、わざわざ代位する必要がないでしょう?
でも、無資力じゃなくても使える場面があるって聞いたよ?
よく知っているわね。登記請求権の転用よ。
不動産がA→B→Cと転売されたのに登記がAのまま。
CはBのAに対する登記請求権を代位行使できる。
特定債権の保全だから、この場合は無資力を要しないの。
行使の範囲についても改正がありました。
被代位権利が可分であるときは、自己の債権額の限度でのみ行使できる(423条の2)。
そうね。
しかも金銭や動産の引渡しなら、債権者は自分への引渡しを直接請求できる(423条の3)。
相手方は債務者に対する抗弁を債権者にも主張できるわ(423条の4)。
よっしゃ、なんか作戦っぽくて分かってきた! で、代位したら債務者はもう自分で取り立てできないの?
それも改正点。
現行法では、代位行使しても債務者は自ら取立てその他の処分ができるし、相手方も債務者に履行できる(423条の5)。
旧法の管理権喪失の考え方が変わったのよ。
ぽわわ〜、覚えることいっぱい。
でも転用の話はイメージしやすかったのぉ。
えへへ。
確認クイズ
債権者代位権に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 被代位権利が可分であっても、債権者は自己の債権額を超えて全部を行使できる
- 登記請求権を保全するための債権者代位権の転用には、債務者の無資力が必要である
- 被保全債権の履行期が到来していなくても、保存行為であれば債権者は代位権を行使できる
- 債権者が代位権を行使すると、債務者は当該権利について自ら取立てをすることができなくなる
こたえを見る
正解: 3. 被保全債権の履行期が到来していなくても、保存行為であれば債権者は代位権を行使できる
選択肢3が正しい。423条2項ただし書により、保存行為は被保全債権の履行期到来前でも行使できる。選択肢1は誤り。被代位権利が可分なときは自己の債権額の限度でのみ行使できる(423条の2)。選択肢2は誤り。登記請求権保全の転用事例は特定債権の保全であり無資力を要しない。選択肢4は誤り。423条の5により、代位行使後も債務者は自ら取立てその他の処分ができる。