債務不履行が認められたら、次はいくら賠償するのか。賠償の範囲を画する416条、被害者側の落ち度を斟酌する過失相殺、あらかじめ額を決めておく賠償額の予定、そして裁判所を通じた履行の強制までを見ていきます。
先生、損害賠償の範囲はどこまで認められるのですか? 際限なく広がると債務者が酷では?
いい問題意識ね、つむぎさん。
416条が線を引くの。
まず通常損害は当然に賠償対象。
そして特別損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときに限って賠償範囲に入るのよ。
予見『すべきだった』かどうか……その時点はいつを見るのぉ?
判例は、債務不履行の時を基準に予見可能性を判断すると考えられているわ。
条文の文言は『予見すべきであった』で、旧法の『予見し、又は予見することができた』から改められたの。
じゃあさ、事故で自分もちょっと不注意だったら? 全額もらえないの?
そこが過失相殺よ(418条)。
債権者に過失があれば、裁判所はこれを考慮して賠償額を定める。
しかも債務不履行では、責任の有無そのものにも斟酌でき、裁判所は職権で考慮しなければならないの。
つまり不法行為の過失相殺(722条2項)が『考慮できる』任意的なのに対し、債務不履行(418条)は『考慮する』必須的――ここが対比ですね。
そのとおり。
よく整理できているわ。
さらに、あらかじめ違約金として額を決める損害賠償額の予定もできる(420条)。
予定した以上、原則として実損の証明は不要よ。
え、じゃあ実際の損害が少なくても予定額もらえるの? 得じゃん?
原則はね。
ただし、現行法では裁判所が予定額を増減できないという旧規定は削除されて、公序良俗違反などで一部無効となる余地は残っているわ。
それと、違約金は賠償額の予定と推定されるのもポイント。
お金を払う約束を破ったときは、また特別なルールがあるって聞いたのぉ。
金銭債務の特則ね(419条)。
金銭債務は不可抗力でも免責されず、損害の証明も不要で、賠償額は法定利率(または約定利率)で計算する。
これは覚えておいて。
そして最終手段が履行の強制ですね。
414条により直接強制・代替執行・間接強制などの方法で、民事執行法の手続に従って実現する、と。
確認クイズ
損害賠償に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 特別の事情によって生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときに賠償の範囲に含まれる
- 金銭債務の不履行については、不可抗力を証明すれば債務者は賠償責任を免れる
- 債権者に過失があっても、債務不履行による損害賠償では裁判所はこれを考慮できない
- 損害賠償額の予定をした場合、債権者は実際に生じた損害額を証明しなければ予定額を請求できない
こたえを見る
正解: 1. 特別の事情によって生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときに賠償の範囲に含まれる
選択肢1が正しい。416条2項のとおり、特別損害は当事者が予見すべきであった特別の事情から生じたものに限り賠償範囲に含まれる。選択肢2は誤り。金銭債務は不可抗力をもって抗弁とすることができない(419条3項)。選択肢3は誤り。418条により裁判所は債権者の過失を考慮して賠償額(および責任)を定める。選択肢4は誤り。賠償額の予定があれば実損の証明は不要である(420条)。