所有権は最も完全な物権です。もっとも、隣どうしの土地利用を調整する相隣関係や、複数人で一つの物を持つ共有では、権利がぶつかり合います。近年の改正論点も含めて整理します。
先生、自分の土地なら、隣のことなんて気にせず何でもできるんじゃないの?
そうもいかないのよ。
隣り合う土地の利用を調整するのが相隣関係。
たとえば、境界付近の工事などのために、必要な範囲で隣地を使わせてもらう隣地使用が認められているの。
公道に通じない土地の所有者が、隣地を通って公道に出られる囲繞地通行権(袋地の通行権)も相隣関係の代表例ですね。
そのとおり。
通行の場所・方法は、通行権者のために必要で、かつ隣地に最も損害の少ないものを選ばなければならないわ。
原則として償金の支払いも必要よ。
うぅ〜ん、二つの物がくっついて離せなくなったら、持ち主はどうなるのぉ?
それが添付。
付合・混和・加工の総称ね。
たとえば他人の材料が不動産に付合すると、原則として不動産の所有者がその所有権を取得し、失った側は償金を請求できる、という調整をするの。
何人かで一つの物を持つときは、どう決めるの?
それが共有。
各共有者は持分を持つわ。
行為の重さで決め方が違うのがポイントよ。
保存行為は各共有者が単独ででき、管理行為は持分価格の過半数で決し、変更行為(その形状・効用の著しい変更を伴うもの)は共有者全員の同意が必要、という段階ですね。
整理が正確ね。
各共有者はいつでも共有物の分割を請求できるのが原則。
ただし、5年を超えない範囲で分割をしない特約を結ぶことはできるわ。
分割ってどうやるの? 土地を真っ二つ?
共有物分割には、現物分割・賠償分割(全面的価格賠償)・競売による代金分割があるの。
協議が調わないときは裁判所に分割を請求できるわ。
…みんなのものだからこそ、決め方のルールが要るんだね。
確認クイズ
所有権・共有に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 共有物の管理に関する事項は、共有者全員の同意がなければ決することができない
- 共有物の保存行為は、各共有者が単独ですることができる
- 各共有者は、いかなる場合も共有物の分割を請求することができない
- 袋地の所有者が囲繞地を通行する場合、通行の場所は隣地所有者が任意に指定できる
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正解: 2. 共有物の保存行為は、各共有者が単独ですることができる
選択肢2が正しい。保存行為は各共有者が単独でできる。選択肢1は誤り。管理行為は持分価格の過半数で決する。選択肢3は誤り。各共有者は原則としていつでも分割を請求できる。選択肢4は誤り。通行の場所・方法は通行権者に必要で隣地に最も損害の少ないものを選ばなければならない。
2023年4月の改正で加わった決まり:枝の切取り・ライフライン・共有・土地の管理命令
先生、お隣の木の枝がこっちの庭まで伸びてきたら、切っちゃっていいのぉ?
原則は、竹木の所有者に切除させること。
でも2023年4月1日施行の改正で、①切除するよう催告したのに相当の期間内に切除しないとき、②竹木の所有者やその所在を知ることができないとき、③急迫の事情があるときは、土地の所有者が自分で枝を切り取れるようになったの(233条3項)。
根のほうは、前から自分で切り取れるわ。
電気や水道を引くのに、よその土地を通さなきゃいけないときは?
それも条文になったわ。
他の土地に設備を設置したり、他人の設備を使ったりしなければ、電気・ガス・水道などの供給を受けられない土地の所有者は、必要な範囲で、設備の設置や使用ができるの(213条の2)。
ライフラインの設備設置権・設備使用権ね。
場所と方法は損害が最も少ないものを選び、あらかじめ相手に通知することが必要よ。
共有のルールも見直されましたね。
形状や効用の著しい変更を伴わない、いわゆる軽微な変更は、全員の同意ではなく持分価格の過半数で決められるようになりました(251条1項・252条1項)。
そのとおり、つむぎさん。
もうひとつ大事なのが、ほかの共有者が誰なのか、どこにいるのかがわからない場合。
裁判所の決定を得れば、その共有者を除いた残りの共有者の全員の同意で変更を加えたり(251条2項)、残りの共有者の持分価格の過半数で管理に関する事項を決めたり(252条2項)できるの。
持ち主がわからない土地そのものは、ほったらかしになっちゃうの?
そのための制度が所有者不明土地管理命令よ。
所有者やその所在を知ることができない土地について、利害関係人の請求により、裁判所が管理人による管理を命じるの(264条の2)。
所有者はわかっていても、管理が不適当で他人の権利や利益が侵害され、またはそのおそれがあるときは、管理不全土地管理命令があるわ(264条の9)。
建物についても、同じ仕組みが用意されているのよ。
…持ち主がわからなくても、ちゃんと面倒を見る人を決められるんだね。
確認クイズ
2023年4月1日施行の改正後の民法(相隣関係・共有など)に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 隣地の竹木の枝が境界線を越えた場合、土地の所有者は、竹木の所有者に催告することなく、いつでも自らその枝を切り取ることができる
- 共有物の形状または効用の著しい変更を伴わない変更は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することができる
- 所在を知ることができない共有者がいる場合、その共有物に変更を加える方法はない
- 所有者不明土地管理命令は、利害関係人の請求がなくても、市町村長が発することができる
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正解: 2. 共有物の形状または効用の著しい変更を伴わない変更は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することができる
選択肢2が正しい。軽微な変更は、管理に関する事項として持分価格の過半数で決する(251条1項・252条1項)。選択肢1は誤り。原則は竹木の所有者に切除させ、催告しても相当の期間内に切除しないとき、所有者やその所在を知ることができないとき、急迫の事情があるときに限り、自ら切り取れる(233条)。選択肢3は誤り。裁判所の決定を得て、その共有者以外の共有者全員の同意で変更を加えることができる(251条2項)。選択肢4は誤り。所有者不明土地管理命令は、利害関係人の請求により裁判所が発する(264条の2)。