無権代理でも、相手方が『代理権がある』と信じたのがもっともな場合には、本人に責任を負わせるのが表見代理です。3つの類型と、それらの重ね合わせ(重畳適用)を押さえましょう。
先生、表見代理は無権代理の一種なのに、本人が責任を負う。
理由は外観への信頼保護、という理解で合っていますか?
合っているわ、つむぎさん。
本人が外観の作出に関与している以上、それを信じた相手方を守る。
94条2項と同じ発想の家族ね。
類型は3つよ。
1つ目が代理権授与表示による表見代理(109条)。
本人が『この人に代理権を与えた』と第三者に表示したのに、実は与えていなかった場合。
2つ目は?
権限外の行為の表見代理(110条)。
基本代理権を持つ代理人が、その権限を越えて行為した場合ね。
相手方に『権限があると信じる正当な理由』があれば成立するわ。
『正当な理由』は、善意無過失と同じ意味に解されていますね。
そう。
3つ目が代理権消滅後の表見代理(112条)。
かつて代理権があったけれど消滅した後に代理行為をした場合。
相手方が消滅を知らなかった(善意無過失)ときに保護されるの。
うぅ〜ん、その3つが混ざったときはどうなるのぉ?
鋭いわね、ましろちゃん。
それが重畳適用。
たとえば、代理権が消滅した後に、さらに元の権限を越える行為をした場合。
112条と110条を重ねて、相手方に正当な理由があれば本人が責任を負う、と判例は認めているわ。
109条と110条の重畳適用もありますね。
授与表示された権限を越えた行為でも、正当な理由があれば保護される。
要は、外観を信じるのがもっともなら、どの入口からでも本人が責任を負う、ってこと?
ジャスミンさん、見事なまとめ。
相手方の正当な信頼を、いくつもの角度から救う仕組みなのよ。
確認クイズ
表見代理に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 権限外の行為の表見代理が成立するには、相手方が代理権があると信ずべき正当な理由を有することが必要である
- 代理権授与表示による表見代理は、本人が代理権を与えた旨を表示していなくても成立する
- 代理権消滅後の表見代理は、相手方が代理権の消滅を知っていた場合にも成立する
- 表見代理が成立する場合、相手方は無権代理人の責任を追及することは一切できない
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正解: 1. 権限外の行為の表見代理が成立するには、相手方が代理権があると信ずべき正当な理由を有することが必要である
選択肢1が正しい(民法110条)。選択肢2は誤り。109条は本人が代理権授与の表示をしたことが前提。選択肢3は誤り。112条は相手方が消滅につき善意無過失であることが必要。選択肢4は誤り。表見代理が成立しても、相手方は無権代理人の責任(117条)を選択して追及できると解されている。