代理権がないのに代理人として契約したら、その契約はどうなるのでしょう。無権代理は、本人・相手方・無権代理人の三者の利害調整がテーマです。とくに無権代理と相続は記述でも問われます。
先生、代理権がないのに勝手に代理した契約って、無効になるの?
無効ではなく『宙ぶらりん』よ。無権代理行為は、本人が追認すれば契約時にさかのぼって有効になり、追認拒絶すれば本人には効果が及ばないの。
本人が確答しないと相手方は困りますよね。
だから相手方に催告権・取消権があると。
そう。
相手方は本人に相当の期間を定めて催告権を行使できる。
期間内に確答がなければ追認拒絶とみなされるわ。
あわせて、善意の相手方は本人が追認しない間、契約を取消権で取り消せるの。
うぅ〜ん、追認してもらえなかったら、契約した相手はどうなるのぉ?
救済になるのが無権代理人の責任(117条)。
相手方は、無権代理人に対し、履行または損害賠償を選択して請求できるの。
ただし要件がありますね。
相手方が善意無過失であること、無権代理人が代理権を証明できず本人の追認も得られないこと。
そのとおり。
もっとも、無権代理人が自分に代理権がないことを知っていた(悪意)ときは、相手方に過失があっても責任を追及できるわ。
相手方が制限行為能力者であるときなどは責任を負わない、という除外もあるの。
無権代理した人が、あとで本人を相続しちゃったら?
それが無権代理と相続。
無権代理人が本人を単独で相続した場合、判例は、本人が自ら法律行為をしたのと同様の地位に立つとして、追認を拒絶することは信義則上許されない、としているわ。
逆に、本人が無権代理人を相続した場合は、本人の地位で追認を拒絶できる、というのが判例ですね。
…立場が逆になると、結論も変わるんだね。
おもしろい。
確認クイズ
無権代理に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 無権代理行為は当然に無効であり、本人が追認しても有効となる余地はない
- 無権代理人が本人を単独で相続した場合、無権代理人は本人の資格で追認を拒絶できるのが原則である
- 無権代理人の責任を追及するには、相手方は原則として善意かつ無過失でなければならない
- 本人に対する催告に対して本人が確答しないときは、追認したものとみなされる
こたえを見る
正解: 3. 無権代理人の責任を追及するには、相手方は原則として善意かつ無過失でなければならない
選択肢3が正しい(民法117条2項)。選択肢1は誤り。本人の追認により契約時にさかのぼって有効となる。選択肢2は誤り。無権代理人が本人を単独相続した場合、追認拒絶は信義則上許されない。選択肢4は誤り。相手方の催告に対し本人が確答しないときは追認を拒絶したものとみなされる。