取消訴訟の審理はどこまで裁判所が踏み込めるのか。そして勝ったとき、その判決はどこまで効くのか。職権証拠調べ、事情判決、取消判決の形成力・第三者効・拘束力を整理します。
行政訴訟でも、民事訴訟と同じように当事者が主張立証するのですか。
基本は同じ、弁論主義が土台よ。
ただし特則があるわ。職権証拠調べ——裁判所は必要があると認めるときは、職権で証拠調べをすることができるの。
ただし、その結果について当事者の意見を聴かなければならないわ。
裁判所が自分で調べてくれるんだ! 心強いじゃん?
ただし、当事者が主張していない事実まで裁判所が拾い上げる職権探知までは認められていない、という理解で合っていますか?
合っているわ。
証拠調べは職権でできるけれど、職権探知主義は採っていない。
この区別は頻出よ。
行政のほうが情報をたくさん持っているのに、こっちが全部証明するのは大変だよね……。
そこも手当てがあるの。
釈明処分の特則ね。
裁判所は、処分の内容や根拠法令、原因事実など処分の理由を明らかにする資料の提出を求めることができるわ。
で、判決にはどんな種類があるの?
訴訟要件を欠けば却下判決。
理由がなければ棄却判決。
理由があれば認容判決=取消判決よ。
そしてもうひとつ、事情判決があるわ。
処分は違法なのに、請求は棄却される——という不思議な判決ですね。
そう。
処分が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合に、諸事情を考慮して取消しが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は請求を棄却できる。
ただし判決の主文で、処分が違法であることを宣言しなければならないの。
……勝ったのか、負けたのか、よく分からない気持ちになりそう。
形式上は敗訴。
でも違法だと主文で認定されるから、その後の損害賠償請求につながるのよ。
なお事情判決は取消訴訟に固有の制度で、無効等確認訴訟には準用されないわ。
勝ったときは、どうなるの? 役所が改めて取り消してくれるまで待つ?
待たなくていいの。
取消判決には形成力があるから、判決の確定によって処分は当然に効力を失い、初めから処分がなかったのと同じ状態になるわ。
行政庁が改めて取り消す必要はないの。
第三者にも効力が及ぶと聞きました。
第三者効ね。
処分を取り消す判決は第三者に対しても効力を有する。
だから第三者の訴訟参加や、第三者の再審の訴えという手続が用意されているの。
さらに拘束力——取消判決は、その事件について処分をした行政庁その他の関係行政庁を拘束するわ。
じゃあ、申請を断られて勝ったら、もう許可がもらえる?
そこまでは行かないの。
行政庁は判決の趣旨に従って改めて申請に対する処分をしなければならないけれど、判決で示された違法理由とは別の理由があれば、再び拒否することもあり得るわ。
確認クイズ
取消訴訟の審理および判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 裁判所は職権で証拠調べをすることができるが、その結果については当事者の意見を聴かなければならない。
- 事情判決がされた場合、判決の主文で処分が違法であることを宣言する必要はない。
- 取消判決が確定しても、行政庁が改めて処分を取り消さない限り、処分の効力は失われない。
- 処分を取り消す判決の効力は、訴訟の当事者にのみ及び、第三者には及ばない。
こたえを見る
正解: 1. 裁判所は職権で証拠調べをすることができるが、その結果については当事者の意見を聴かなければならない。
選択肢1が妥当。裁判所は必要があると認めるときは職権で証拠調べをすることができるが、その結果について当事者の意見を聴かなければならない(職権証拠調べ)。選択肢2は誤り。事情判決では、判決の主文において処分が違法であることを宣言しなければならない。選択肢3は誤り。取消判決には形成力があり、確定により処分は当然に効力を失う。選択肢4は誤り。処分を取り消す判決は第三者に対しても効力を有する(第三者効)。