行政書士試験の最大の得点源、それが行政法です。ところが「行政法」という名前の法律は、六法のどこを探しても存在しません。まずは行政法という科目がどんな地図でできているのか、そしてすべての土台になる「法律による行政の原理」から確認していきましょう。
先生、本屋で行政法の六法を探したんだけど、見つからなかったんだよね。
売り切れ?
ふふっ、それは売り切れじゃなくて、最初から存在しないの。
行政法というのは、行政に関わるたくさんの法律をまとめて呼ぶ「学問上の名前」なのよ。
えーっ! なんで? じゃああたし、何を勉強すればいいの?
地図を渡すわね。
行政法は大きく3つの分野に分かれるの。行政組織法、行政作用法、行政救済法。
この3つよ。
行政組織法は「誰が」、行政作用法は「何をするか」、行政救済法は「やられた国民がどう争うか」。
つまり主語・動詞・反撃、という理解で合っていますか?
見事な整理ね。
行政不服審査法や行政事件訴訟法、国家賠償法が救済法。
行政手続法や行政代執行法が作用法。
内閣法や国家行政組織法、地方自治法が組織法にあたるわ。
うぅ〜ん…でも、そもそも行政って、どうしてそんなにルールで縛られてるの?
いい問いね。
行政は税金を取ったり、建物を壊したり、強い力を持っている。
だからこそ、国民の代表である国会が作った法律に従わせる。
これが法律による行政の原理、いわゆる法治主義よ。
この原理は、さらに3つの内容に分解されると習いました。
そう。
1つめが法律の法規創造力。
国民の権利義務に関わる一般的なルールを作れるのは、原則として法律だけ。
2つめが法律の優位。
行政の活動は法律に違反してはならない。
これは、法律がある場面での話ね。
そして3つめが法律の留保。
こちらは「そもそも法律の根拠がなければ活動できない」という話。
優位とは向きが違うから、混同しないで。
要は、優位は「ルール違反するな」、留保は「許可証なしで動くな」ってこと?
上手い言い換えね。
その通りよ。
では、どの範囲に許可証が要るのか。
ここで学説が割れるの。
通説・実務は侵害留保説ですね。
国民の権利を制限し、または義務を課す行政活動にのみ法律の根拠を要求する。
そう。
ほかに、すべての行政活動に根拠を求める全部留保説、給付行政も含めるとする社会留保説、権力的な活動すべてとする権力留保説などがあるわ。
えへへ、侵害留保説って、痛いことをするときだけ許可証がいる、ってことなんだね。
マジで!? ましろちゃん、今のすごく分かりやすい!
確認クイズ
法律による行政の原理に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 法律の優位の原則とは、行政活動を行うには必ず法律の根拠が必要であるという原則をいう。
- 法律の留保に関する侵害留保説は、国民の権利を制限し、または義務を課す行政活動には法律の根拠が必要であるとする考え方であり、わが国の実務が前提としてきた立場である。
- 全部留保説は、行政活動のうち侵害的なものについてのみ法律の根拠を要求する立場である。
- 法律の法規創造力の原則により、行政機関は法律の授権がなくても、国民の権利義務に関する一般的な規範を定めることができる。
こたえを見る
正解: 2. 法律の留保に関する侵害留保説は、国民の権利を制限し、または義務を課す行政活動には法律の根拠が必要であるとする考え方であり、わが国の実務が前提としてきた立場である。
選択肢2が正しい。侵害留保説は、国民の権利を制限し義務を課す侵害的な行政活動についてのみ法律の根拠を要求する立場で、日本の実務が前提としてきた考え方である。選択肢1は誤り。法律の根拠を要求するのは法律の留保であり、法律の優位は「行政活動が既存の法律に違反してはならない」という原則である。選択肢3は誤り。侵害的なものに限定するのは侵害留保説であって、全部留保説はすべての行政活動に法律の根拠を要求する。選択肢4は誤り。法律の法規創造力の原則は、国民の権利義務に関する一般的規範の定立を原則として法律に独占させるものであり、行政機関が法律の授権なしにこれを定めることはできない。