処分を取り消してほしい。では、誰を相手にすればよいのでしょうか。市長? 市の職員? それとも市そのもの? この問いに答えるのが行政組織法です。行政主体と行政機関の区別、そして権限の代理・委任・専決という「権限のやりくり」を整理します。
先生、税務署長の処分に不満があるとき、訴える相手は税務署長ですか、それとも国ですか。
そこを分けるのが第一歩ね。
権利義務の主体になれるのは行政主体。
国、都道府県、市町村、独立行政法人、土地改良区のような公共組合などよ。
一方、行政主体のために実際に手足を動かすのが行政機関。
税務署長や市長は行政機関のうちの行政庁にあたるわ。
よっしゃ、分かった気がする! 会社が行政主体で、社長が行政庁ってこと?
その喩え、悪くないわ。
行政庁は、行政主体の意思を決定して、外部に表示する権限を持つ機関。
大臣、知事、市町村長、税務署長がその代表例よ。
行政庁以外の行政機関も整理しておきたいです。
ええ。
行政庁の職務を助ける補助機関が副知事や一般職員。
意見を述べるだけで法的拘束力を持たない諮問機関。
議決に行政庁が拘束される参与機関。
実力行使をする執行機関。
会計検査院のような監査機関ね。
ふぇぇ〜、諮問と参与って、名前が似てるのに全然ちがうんだね。
諮問機関の答申に反する処分をしても、それだけでは違法にならない。
参与機関の議決に反すれば違法。
ここが分岐点ですね。
そのとおり。
さて、ここからが本題。
行政庁の権限は、他の機関に渡すことができるの。
渡し方が3種類あるわ。
1つめが権限の委任。
権限そのものが受任機関に移り、受任機関が自分の名と責任で処分をする。
権限の所在を法律が定めている以上、これを動かすには法律の根拠が必要よ。
えーっ! 名前まで変わっちゃうの? じゃあ訴える相手も変わるじゃん?
そう、そこが実益。
2つめが権限の代理。
こちらは権限が移らない。
代理機関は「○○庁代理」と示して行為をするから、法的な効果は元の行政庁に帰属するわ。
代理には、行政庁自らが授権する授権代理と、法定の事由が生じて当然に代理関係が生じる法定代理がありますね。
よく整理できているわ。
そして3つめが専決・代決。
補助機関が内部的に決裁するけれど、対外的にはあくまで行政庁の名で処分が行われるの。
権限は移らないから、法律の根拠は要らない。
うぅ〜ん…委任だけが法律の根拠が必要で、あとは要らないの?
その理解で大丈夫。
試験ではこの対比が繰り返し問われるわ。
権限が動くか動かないか、誰の名前で出るか。
この2軸で覚えて。
確認クイズ
行政庁の権限の委任、代理および専決に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 権限の委任がなされた場合であっても、当該権限は委任機関に留保され、受任機関は委任機関の名で権限を行使する。
- 権限の委任は、法律が定めた権限の所在を対外的に変更するものであるから、法律の根拠を必要とする。
- 授権代理においては、被代理機関の権限が代理機関に移転する。
- 専決は、補助機関が自己の名において処分を行うものであり、法律の根拠を必要とする。
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正解: 2. 権限の委任は、法律が定めた権限の所在を対外的に変更するものであるから、法律の根拠を必要とする。
選択肢2が正しい。権限の委任は権限そのものを受任機関に移転させ、法律が定めた権限の所在を変更するものであるから、法律の根拠を要する。選択肢1は誤り。委任により権限は受任機関に移り、受任機関が自己の名と責任で行使する。選択肢3は誤り。代理では権限は移転せず、代理機関は被代理機関のために行為し、その効果は被代理機関に帰属する。選択肢4は誤り。専決は内部的な事務処理方式にすぎず、対外的には行政庁の名で処分が行われるため、法律の根拠は不要と解されている。