訴える資格があっても、勝ったところで何も回復しないなら裁判をする意味がない。それを問うのが狭義の訴えの利益です。処分の効力が消えた後も争えるのか、判例で線引きを確認します。
建物が完成しちゃった後で、建築確認を取り消しても……もう建っているよね?
ましろさん、それがまさに狭義の訴えの利益の話よ。
取り消しても現実に回復するものがなければ、訴えの利益は失われるの。
判例は、建築確認は工事が完了すれば取消しを求める訴えの利益を失うとしていますね。
工事完了後は、建築確認の効力を取り消しても是正命令などが当然に出るわけではないから、と。
うわ、じゃあ工事が終わるまでにダッシュで訴えないとダメってこと?
実際そういう厳しさがあるわ。
だからこそ執行停止が重要になるの。
でも、全部が全部そうなの? 終わったらおしまい、って冷たすぎる気がするよ。
そこがおもしろいところ。
土地改良事業の施行認可については、判例は工事が完了しても訴えの利益は失われないとしたの。
仮に原状回復が社会通念上不可能でも、それは事情判決で処理すべき問題であって、訴えの利益の消滅とは別だ、と。
建築確認は工事完了で失われ、土地改良事業の認可は失われない。
根拠法令の仕組みの違い、ということですね。
そう。
9条1項の括弧書きが効いてくるわ。
処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後でも、なお処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者は含む、と書いてあるの。
回復すべき法律上の利益……ピンとこないなぁ。
たとえば、免職処分を受けた公務員が公職の選挙に立候補したケース。
立候補で公務員の職は自動的に失われるから、地位そのものは戻らない。
でも判例は、免職処分が取り消されれば免職から立候補までの間の給与請求権を回復できるとして、訴えの利益を認めたのよ。
おお〜! お金の分だけでも取り返せるってことか。
反対に、否定された例もありますよね。
運転免許の停止処分ね。
停止期間が過ぎ、さらに無違反・無処分のまま1年を経過した後は、名誉や感情が害されるといっても事実上の効果にすぎないとして、訴えの利益は失われるとされたわ。
気持ちの問題は、法律上の利益じゃない……。
厳しいけれど、線を引くならそこなんだね。
そのとおり。
「名誉・感情・事実上の効果」は原則として訴えの利益にならない。
ここは絶対に落とせないわ。
確認クイズ
狭義の訴えの利益に関する次の記述のうち、判例に照らして妥当なものはどれか。
- 建築確認の取消訴訟において、当該建築工事が完了した後も訴えの利益は失われない。
- 土地改良事業の施行認可の取消訴訟において、工事が完了しても訴えの利益は失われない。
- 運転免許の停止処分は、停止期間の経過後も、名誉が害されている限り訴えの利益が認められる。
- 処分の効果が期間の経過により消滅した場合、いかなる場合も訴えの利益は失われる。
こたえを見る
正解: 2. 土地改良事業の施行認可の取消訴訟において、工事が完了しても訴えの利益は失われない。
選択肢2が妥当。判例は、土地改良事業の施行認可について、工事が完了し原状回復が社会通念上不可能であっても、それは事情判決で考慮すべき事柄であって訴えの利益は失われないとした。選択肢1は誤り。判例は、建築確認は工事完了により取消しを求める訴えの利益を失うとしている。選択肢3は誤り。判例は、免許停止期間経過後に無違反・無処分で1年を経過した場合、名誉・感情は事実上の効果にすぎず訴えの利益は失われるとした。選択肢4は誤り。9条1項括弧書きにより、なお回復すべき法律上の利益があれば訴えの利益は認められる。