処分性をクリアしても、次の関門は「あなたが訴えていいのか」。原告適格の判断は9条1項の「法律上の利益」と、9条2項の考慮事項で行います。処分の相手方以外の第三者が争えるかが勝負どころです。
近所に危なそうな施設ができるんだけど、あたしが許可を取り消してって訴えるのはアリ?
それが原告適格の問題ね。
9条1項は、処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起できると定めているの。
処分の名あて人であれば当然に認められますが、問題は第三者ですね。
そう。
判例の立場は法律上保護された利益説よ。
処分の根拠法規が、その利益を単なる一般的公益に吸収させず、個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含んでいるか。
ここを見るの。
うぅ〜ん……法律が守ってくれてる人だけ、訴えられるのぉ?
端的に言えばそうなるわ。
だから昔は、周辺住民が締め出されがちだったの。
えーっ! それじゃ誰も止められないじゃん?
その反省から、平成16年改正で9条2項が入ったのよ。
第三者の原告適格を判断するときは、根拠法令の文言だけで決めてはいけない。
法令の趣旨・目的、処分において考慮されるべき利益の内容と性質を考慮する。
趣旨・目的を考えるときは目的を共通にする関係法令も参酌し、利益を考えるときは害される態様や程度も勘案する、と。
判断枠組みそのものを条文に書き込んで、間口を広げたわけですね。
ええ。
象徴的なのが小田急高架訴訟よ。
最高裁大法廷は、都市計画事業の認可について、事業の実施により騒音・振動などによる健康または生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある周辺住民に原告適格を認めたの。
従来の判例を変更してね。
そこに住んでいて、実際にうるさくて眠れなくなる人……その人は当事者だよね。
ましろさんの言うとおり。
距離と被害の直接性が鍵ね。
ほかにも、原子炉設置許可について周辺住民に原告適格を認めた判例、航空運送事業の免許について騒音被害を受ける空港周辺住民に認めた判例があるわ。
逆に、認められなかった例は?
主婦連ジュース事件が有名ね。
公正取引委員会がした公正競争規約の認定について、一般消費者が不服申立てをした事案。
最高裁は、一般消費者の受ける利益は反射的利益にすぎないとして、不服申立適格を否定したわ。
つまり、消費者一般という漠然とした立場では足りず、個別的利益として保護されていることが必要——という理解で合っていますか?
合っているわ。
そこが原告適格の核心。
「みんなの利益」で止まるか、「あなたの利益」まで届くか、なの。
確認クイズ
取消訴訟の原告適格に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 処分の相手方以外の者の原告適格は、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによって判断しなければならない。
- 判例は、公正競争規約の認定について、一般消費者に不服申立適格を認めた。
- 原告適格は、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り認められる。
- 都市計画事業の認可について、判例は事業地の周辺住民に原告適格を一切認めていない。
こたえを見る
正解: 3. 原告適格は、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り認められる。
選択肢3が妥当。行政事件訴訟法9条1項は、取消訴訟は当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起できると定める。選択肢1は誤り。9条2項は、根拠法令の文言のみによることなく、法令の趣旨・目的や考慮されるべき利益の内容・性質を考慮すべきものとしている。選択肢2は誤り。主婦連ジュース事件で判例は、一般消費者の受ける利益は反射的利益にすぎないとして不服申立適格を否定した。選択肢4は誤り。小田急高架訴訟で最高裁は、騒音・振動等による著しい被害を直接的に受けるおそれのある周辺住民に原告適格を認めた。