取消訴訟の入口を守る門番が「訴訟要件」です。なかでも最頻出が処分性。何が「行政庁の処分」に当たるのかを、最高裁の定式と具体的な判例で押さえます。
先生、取消訴訟を起こすには何を満たせばよいのですか。
訴訟要件ね。
処分性、原告適格、狭義の訴えの利益、被告適格、出訴期間、管轄。
ひとつでも欠けると、中身を審理してもらえずに却下されるわ。
門前払い……。
試合開始前に失格みたいなもの?
そう、その感覚でいいわ。
だから訴訟要件は毎年のように問われるの。
今日は入口の入口、処分性よ。
処分性って、何なのぉ?
最高裁の定式があるわ。処分性とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているもの。東京都ごみ焼却場事件——最判昭和39年10月29日——で示された言い回しよ。
キーワードは「公権力性」と「直接・具体的な法効果」ですね。
そのとおり。
この2つで振り分けるの。
じゃあ、役所の「お願い」——行政指導は?
原則として処分性なし。
相手方の任意の協力を求めるだけで、法的な義務を生じさせないからね。通達も同じ。
上級行政庁が下級行政庁に出す内部的な命令にすぎず、国民を直接拘束しないから、原則として処分性は否定されるわ。
でも……従わないと本当に困ることって、あるよね。
お願いという名前でも。
ましろさん、そこが判例の核心よ。
医療法に基づく病院開設中止の勧告は行政指導だけれど、従わなければ保険医療機関の指定を受けられず、事実上病院経営が成り立たない。
判例はこの勧告に処分性を認めたの。
形式ではなく、実質的な効果で判断している。
ならば条例にも処分性が認められる余地がありますね。
ええ。
特定の保育所を廃止する条例について、判例は処分性を認めているわ。
特定の児童の保育を受ける法的地位を、条例そのものが直接奪うからよ。
逆に、都市計画法上の用途地域の指定には処分性が否定されている。
違いは何? どっちも「決めるだけ」に見えるけど。
用途地域の指定は、その段階では一般的・抽象的な制約にとどまり、個別の権利義務を直接動かさない。
一方、保育所廃止条例は名指しで法的地位を失わせる。
直接性・具体性の有無が分かれ目ね。
ちなみに土地区画整理事業の事業計画の決定には、最高裁が判例を変更して処分性を認めたわ。
確認クイズ
取消訴訟における処分性に関する次の記述のうち、判例に照らして妥当なものはどれか。
- 通達は、国民を直接拘束するものであるから、当然に処分性が認められる。
- 特定の保育所を廃止する条例の制定行為について、判例は処分性を認めている。
- 行政指導は相手方に事実上の不利益を与えることがあるため、常に処分性が認められる。
- 都市計画法上の用途地域の指定について、判例は処分性を認めている。
こたえを見る
正解: 2. 特定の保育所を廃止する条例の制定行為について、判例は処分性を認めている。
選択肢2が妥当。判例は、特定の保育所を廃止する条例の制定行為について、条例により特定の児童の保育を受ける法的地位が直接奪われることを理由に処分性を認めている。選択肢1は誤り。通達は行政組織内部の命令であり、国民を直接拘束するものではないから、原則として処分性は否定される。選択肢3は誤り。行政指導は相手方の任意の協力を求めるものであり、原則として処分性は否定される(病院開設中止勧告のように例外的に肯定された例はある)。選択肢4は誤り。判例は用途地域の指定の処分性を否定している。