強制執行が「これからやらせる」手段なら、行政罰は「やらなかったことを罰する」手段です。同じ制裁でも、行政刑罰と秩序罰では科す機関も手続もまったく違います。ここは表で覚えるのが最短ルートです。
先生、駐車違反の反則金と、届出を怠ったときの過料は、どちらも罰だと思うのですが、同じものですか。
まったく別物よ。
行政上の義務違反に対する制裁を行政罰といって、これが行政刑罰と秩序罰に分かれるの。
えへへ、名前に「刑」があるかないか、だね。
見た目どおりよ。
行政刑罰は、刑法に刑名の定めがある罰、たとえば罰金や科料を科すもの。
刑罰である以上、原則として刑法総則が適用されるわ。
科す手続はどうなりますか。
刑事訴訟法の手続によって、裁判所が科すの。
行政庁が勝手に決められるものではないわ。
あたしわかった気がする! 秩序罰のほうは、刑罰じゃないんだ?
そう。
秩序罰は過料のこと。
届出の懈怠のような、行政上の秩序を軽く乱す行為に対する制裁で、刑罰ではないから刑法総則も刑事訴訟法も適用されないの。
…あ、それ私も確認したかったところです。
では、誰が科すのですか。
法律に基づく過料は、非訟事件手続法により裁判所が科すわ。
一方、条例や規則に違反した場合の過料は、地方公共団体の長が行政処分として科すの。
ここが重要な分岐点よ。
うぅ〜ん…同じ「過料」なのに、科す人がちがうんだね。
ややこしいけれど、試験ではまさにそこが問われるわ。
「条例違反の過料は長が科す」。
声に出して覚えてしまいましょう。
ねえ、同じ違反で刑罰も過料も両方くらうことってあるの? 二重処罰じゃない?
鋭い直球ね。
判例は、行政刑罰と秩序罰は目的も要件も手続も異なるとして、両者を併科しても憲法39条の二重処罰の禁止には反しないとしているわ。
行政罰以外の制裁的手段もありますよね。
ええ。
義務違反の事実を世間に知らせる公表、独占禁止法などの課徴金、税法上の加算税、それに許認可の停止・取消しといった手段があるわ。
…公表って、罰よりこわいときがあるかも。
その感覚は大事にして。
制裁として機能する公表は、事実上の不利益が大きいから、法律の根拠を求めるべきだという議論があるの。
ましろさんの直感は、学説の入口に立っているわ。
確認クイズ
行政罰に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 秩序罰としての過料は刑罰の一種であり、その科刑には刑事訴訟法の手続が適用される。
- 条例に違反した者に対して科される過料は、地方公共団体の長が行政処分として科す。
- 同一の行為に対して行政刑罰と秩序罰を併科することは、憲法39条が定める二重処罰の禁止に反するとするのが判例である。
- 行政刑罰は行政上の義務違反に対する制裁であるから、刑法総則の適用はない。
こたえを見る
正解: 2. 条例に違反した者に対して科される過料は、地方公共団体の長が行政処分として科す。
選択肢2が正しい。条例・規則違反に対する過料は、地方自治法に基づき地方公共団体の長が行政処分として科す。これに対し、法律に基づく過料は非訟事件手続法により裁判所が科す。選択肢1は誤り。秩序罰としての過料は刑罰ではないため、刑法総則も刑事訴訟法も適用されない。選択肢3は誤り。判例は、行政刑罰と秩序罰は目的・要件・手続を異にするとして、両者の併科は二重処罰の禁止に反しないとしている。選択肢4は誤り。行政刑罰は刑法に刑名のある刑罰であり、法律に特別の定めがない限り、原則として刑法総則が適用される。