違法建築を壊せと命じたのに、相手が従わない。行政はどうやって実現するのでしょうか。裁判所を通さずに自ら実力を行使できるのが行政の特徴ですが、そこには厳格な法律の枠があります。行政代執行法の要件と手続は、条文レベルで問われます。
先生、命令に従わない人がいたら、役所は勝手に壊しに行っていいの?
「勝手に」は違うわね。
法律の根拠があってはじめてできるの。
義務があるのに履行しない場合の手段が行政上の強制執行。
義務を前提としない手段が即時強制よ。
強制執行には、代執行・執行罰・直接強制・強制徴収の4種類がありますね。
ええ。
中心は代執行。
一般法として行政代執行法があるわ。
ふぇぇ〜、要件がむずかしそう…。
順番に見れば大丈夫。
第一に、法律(法律の委任に基づく命令、規則、条例を含む)により直接命じられ、または法律に基づき行政庁により命じられた行為であること。
第二に、その義務が他人が代わってなしうる行為、つまり代替的作為義務であること。
第三に、他の手段によって履行を確保することが困難であること。
第四に、不履行を放置することが著しく公益に反すると認められること。
この4つよ。
マジで!? 4つ全部そろわないとダメなの?
そう。
特に第二の要件は徹底的に問われるわ。
健康診断を受ける義務のような非代替的作為義務や、営業をやめる義務のような不作為義務には、代執行は使えないの。
つまり、他人が肩代わりできる義務にしか使えない。
そういう理解で合っていますか?
そのとおり。
次に手続。
まず、相当の履行期限を定めて、文書で戒告する。
それでも履行がなければ、代執行令書によって、代執行をなすべき時期、執行責任者の氏名、費用の概算による見積額を通知するの。
ちゃんと2回、警告してくれるんだね。
ええ。
ただし、非常の場合や危険が切迫していて、その手続をとる暇がないときは、戒告と令書を省略できるという例外もあるわ。
費用はどうなりますか。
行政庁が費用の額と納期日を定めて、文書で納付を命じる。
義務者が払わなければ、国税滞納処分の例により強制的に徴収できるわ。
わざわざ民事訴訟を起こす必要はないの。
残りの3つは?
執行罰は、義務を果たすまで過料を予告して心理的に圧迫するもの。
反復して科せるのが特徴だけれど、現行法では砂防法にわずかに残るだけよ。
直接強制は、身体や財産に直接実力を加えるもの。
一般法はなく、個別法があるときだけ。
行政上の強制徴収は、金銭債権について滞納処分により取り立てる手段ね。
そして即時強制は、義務を命じる時間的余裕がない場合などに、義務の存在を前提とせずに実力を行使するもの。
消防法の破壊消防や、警察官職務執行法の避難措置が例ですね。
確認クイズ
行政代執行に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 代執行は、代替的作為義務のほか、非代替的作為義務および不作為義務の履行を確保するためにも用いることができる。
- 代執行を行うには、原則として、あらかじめ相当の履行期限を定めて文書により戒告し、その期限までに履行がないときは、代執行令書により代執行をなすべき時期等を通知しなければならない。
- 代執行に要した費用は、義務者が任意に納付しない場合、行政庁が民事訴訟を提起して回収しなければならない。
- 非常の場合または危険切迫の場合であっても、戒告および代執行令書による通知の手続を省略することはできない。
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正解: 2. 代執行を行うには、原則として、あらかじめ相当の履行期限を定めて文書により戒告し、その期限までに履行がないときは、代執行令書により代執行をなすべき時期等を通知しなければならない。
選択肢2が正しい。行政代執行法は、原則として、相当の履行期限を定めた文書による戒告を行い、なお履行がないときは代執行令書により代執行の時期、執行責任者の氏名および費用の概算による見積額を通知すべきものとしている。選択肢1は誤り。代執行の対象は他人が代わってなしうる代替的作為義務に限られ、非代替的作為義務や不作為義務には用いることができない。選択肢3は誤り。代執行に要した費用は国税滞納処分の例により徴収することができ、民事訴訟による必要はない。選択肢4は誤り。非常の場合または危険切迫の場合で、手続をとる暇がないときは、戒告および代執行令書による通知を経ずに代執行をすることができる。