いったん出した行政行為を、あとから行政庁が引っ込める。この「引っ込め方」には2種類あります。生まれつきの傷を理由にする職権取消しと、あとから生じた事情を理由にする撤回。この違いを、附款とあわせて押さえます。
ちょっと待って。
取消しと撤回って、日常だと同じ意味に聞こえるんだけど。
あらあら、そこが行政法の面白いところ。
この2つはまったく別の制度なの。
分かれ目は、瑕疵がいつ生じたかよ。
職権取消しは、成立当初から違法または不当だった行政行為を、行政庁が自ら取り消すこと。
傷は生まれつき。
だから効力は原則としてさかのぼって失われるわ。
撤回は、成立時には何の問題もなかった行政行為を、あとから生じた事情を理由に将来に向かって失効させること。
違反行為をした、公益上必要になった、といった場合ね。
遡及するかどうかが、効果面での違いですね。
では、誰ができるのですか。
職権取消しは処分庁のほか、上級行政庁も監督権の行使としてできると解されているわ。
でも撤回は、処分庁だけ。
上級庁が勝手に撤回することはできないの。
うぅ〜ん…撤回するには、法律に「撤回できる」って書いてないとダメなの?
そこが有名な論点。
判例は、医師の指定に関する事件で、法令上に直接の根拠規定がなくても、公益上の必要があれば指定を撤回できるとしたわ。
撤回は取消権の場合と同様、明文の根拠は不要と解されているの。
ただし、相手に利益を与える処分の取消し・撤回は、無制限にはできないはずです。
よく気づいたわね。
授益的行政行為の場合は、相手方の信頼保護や既得権益との比較衡量で制限がかかる。
撤回によって損失が生じるときは、損失補償が必要になる場合もあるわ。
よっしゃ、次は附款だね。
名前からしてオマケっぽい。
附款は、行政行為の主たる内容に付け加えられる従たる定めのこと。
オマケというより、条件付きの許可を出すための道具ね。
種類は、条件・期限・負担・撤回権の留保・法律効果の一部除外の5つですね。
そう。
条件は、成否が不確実な事実に効力をかからせるもの。
期限は、到来が確実な事実。
負担は、相手方に別途の義務を課すものよ。
負担を守らなかったら、許可も自動的に消えちゃうの?
いいえ、そこは違うの。
負担に違反しても、行政行為そのものが当然に効力を失うわけではない。
撤回の理由になったり、強制執行の対象になったりするにとどまるわ。
附款を付けられるのは、法律に根拠がある場合か、行政庁に裁量が認められる場合に限られる。
そして準法律行為的行政行為には付せない。
ここも確認しておきます。
確認クイズ
行政行為の職権取消しおよび撤回に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 撤回は、行政行為の成立時に存在した瑕疵を理由として、その効力を遡及的に失わせるものである。
- 職権取消しは、処分庁のほか上級行政庁も行いうると解されているが、撤回は原則として処分庁のみが行うことができる。
- 判例は、授益的行政行為を撤回するには、法律上の明文の根拠が必ず必要であるとしている。
- 行政行為に付された負担に相手方が違反した場合、当該行政行為は当然にその効力を失う。
こたえを見る
正解: 2. 職権取消しは、処分庁のほか上級行政庁も行いうると解されているが、撤回は原則として処分庁のみが行うことができる。
選択肢2が正しい。職権取消しは監督権の行使として上級行政庁も行いうると解されるのに対し、撤回は新たな公益判断に基づくものであるから、処分庁のみが行いうる。選択肢1は誤り。成立時の瑕疵を理由に遡及的に効力を失わせるのは職権取消しである。撤回は後発的な事情を理由に将来に向かって効力を失わせる。選択肢3は誤り。判例は、法令上に直接の根拠規定がなくても、公益上の必要があれば授益的処分を撤回しうるとしている。選択肢4は誤り。負担に違反しても行政行為が当然に失効するわけではなく、撤回事由となるにとどまる。