行政行為に傷(瑕疵)があるとき、それは「取り消しうる」にとどまるのか、それとも最初から「無効」なのか。この分岐は、出訴期間の壁を越えられるかどうかを決める、実務上きわめて重い問題です。
ぽわわ〜…先生、瑕疵って、なんだかこわい漢字だね。
瑕も疵も「きず」という意味よ。
行政行為に法律違反や事実誤認があることをいうの。
問題は、その傷がどれくらい深いか。
取り消しうる行政行為と、無効な行政行為の区別ですね。
ええ。
通説・判例は重大明白説に立つわ。
瑕疵が重大な法規違反であり、かつ、それが処分の外形上、客観的に明白である場合に限って無効になるの。
重大「かつ」明白。
どっちかじゃダメなんだね。
そこは絶対に落とせないところよ。
「重大または明白」という選択肢が出たら、迷わず切ってちょうだい。
うぅ〜ん…でも、無効だと何がうれしいのかな。
無効な行政行為には公定力も不可争力も生じません。
ですから、出訴期間が過ぎたあとでも、無効等確認訴訟で争えますし、民事訴訟の中で前提問題として無効を主張することもできます。
そのとおり。
時間切れの壁を突破できる。
だからこそ、無効のハードルは高く設定されているのよ。
ねえ先生、前の処分が違法だったら、その次の処分も自動的に違法になるの?
それが違法性の承継の問題ね。
原則は承継されないの。
先行行為には公定力があるから、それを争わずに後行行為を叩くのは筋が通らない。
例外はどのような場合でしょうか。
先行行為と後行行為が同一の目的に向けられ、一連の手続を構成して、法的効果も結合しているような場合よ。
判例は、建築基準法上の安全認定と建築確認との間で、違法性の承継を認めているわ。
…でも、目的がぜんぜん違うもの同士なら、切り離されちゃうんだね。
そう。
課税処分と滞納処分のように目的を異にする場合には、承継は認められないと解されているわ。
最後に瑕疵の治癒と違法行為の転換を確認させてください。
瑕疵の治癒は、後の事情によって傷がふさがり、その行為をそのまま有効として扱うこと。
違法行為の転換は、違法な行為を、別の行為としてなら適法だとみて有効に扱うこと。
名前が似ているけれど、中身は別物よ。
ただし判例は、理由の提示の不備については治癒に消極的なの。
処分後に理由が示されても、当初の瑕疵は治らないとしているわ。
確認クイズ
行政行為の瑕疵に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 通説・判例によれば、行政行為が無効となるのは、瑕疵が重大であるか、または明白であるかのいずれか一方を満たす場合である。
- 無効な行政行為については公定力が認められないため、出訴期間の制限を受けることなくその効力を争うことができる。
- 違法性の承継は、先行行為と後行行為が相互に別個の目的を有する場合であっても、常に認められる。
- 瑕疵の治癒とは、違法な行政行為を、別個の行政行為としてみれば適法であるとして有効に扱うことをいう。
こたえを見る
正解: 2. 無効な行政行為については公定力が認められないため、出訴期間の制限を受けることなくその効力を争うことができる。
選択肢2が正しい。無効な行政行為には公定力も不可争力も生じないため、出訴期間の経過後であっても無効等確認訴訟等によりその効力を争うことができる。選択肢1は誤り。重大明白説は、瑕疵が「重大かつ明白」であることを要求する。いずれか一方で足りるとするものではない。選択肢3は誤り。違法性の承継は原則として否定され、先行行為と後行行為が同一の目的に向けられ一連の手続を構成する場合に例外的に認められるにとどまる。選択肢4は誤り。これは違法行為の転換の説明である。瑕疵の治癒は、後の事情により瑕疵が是正され、当該行為をそのまま有効なものとして扱うことをいう。