地方自治の主役は住民です。条例を作れと迫り、議会を解散させ、税金の使い道を裁判で正す。直接請求と住民監査請求・住民訴訟、そして国と地方が対等にぶつかるための国の関与のルールを学びます。
住民って、選挙で投票する以外にもできることがあるの?
あるわ。直接請求という強力な武器がね。
署名を集めて、直接請求ができるの。
必要な署名数は請求の種類によって違いますね。
そこが最頻出。
条例の制定改廃請求と事務の監査請求は、有権者の50分の1以上。
議会の解散請求、議員や長の解職請求は、有権者の3分の1以上よ。
3分の1! それはさすがに大変じゃん?
人の首をかけるのだから重くて当然ね。
ただし大規模自治体では緩和措置があって、有権者が40万を超える部分、80万を超える部分については、必要な割合が段階的に軽くなるわ。
請求は、誰に出すの?
条例の制定改廃は長に。
事務の監査は監査委員に。
解散・解職は選挙管理委員会に出して、住民投票にかけるの。
投票で過半数の同意があれば解散・失職よ。
条例の制定改廃請求には、対象から除かれるものがあったはずです。
地方税の賦課徴収、分担金・使用料・手数料の徴収に関する条例ね。
減税を求める請求が乱発されると財政が立ち行かないから、対象外なの。
税金の使い方がおかしいときは、どうするの?
住民監査請求よ。
違法または不当な公金の支出、財産の取得・管理・処分などについて、監査委員に監査を求めるの。住民なら1人でもでき、署名も選挙権も要らないわ。
1人でいいんだ! それなら、ましろにもできそう。
ええ。
ただし期間制限があって、当該行為があった日または終わった日から1年を経過するとできないの。
正当な理由があるときは例外よ。
監査の結果に納得できないときは、訴訟に進めるのですか。
住民訴訟ね。
ただし住民監査請求を経ていることが必要——監査請求前置よ。
類型は4つ。
差止めの請求、行政処分の取消しまたは無効確認の請求、怠る事実の違法確認の請求、そして職員や相手方に損害賠償等を請求せよと執行機関に求める請求よ。
要は、住民が代わりに「返せ」と言えるってこと?
自分に返せ、ではないの。
地方公共団体に対して「請求しなさい」と求める形ね。
それともう一点、住民監査請求は違法または不当が対象だけれど、住民訴訟は違法のみが対象。
ここは絶対に落とせないわ。
最後に、国と地方の関係についてもお願いします。
国の関与ね。
関与は法律またはこれに基づく政令によらなければ受けない。
しかも目的達成に必要な最小限度のもので、自主性・自立性に配慮しなければならないの。
自治事務には是正の要求、法定受託事務には是正の指示や代執行、と手段も切り分けられているわ。
国のやり方に自治体が納得できないときは?
国地方係争処理委員会に審査を申し出られるわ。
総務省に置かれる委員5人の第三者機関よ。
それでも不服なら、高等裁判所に国の関与の取消しなどを求めて訴えを提起できるの。
国と地方が対等な立場で争える——これが地方分権改革の到達点ね。
確認クイズ
住民の直接参政制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 条例の制定改廃の請求には、選挙権を有する者の総数の3分の1以上の者の連署が必要である。
- 住民監査請求は、当該地方公共団体の住民が1人でも行うことができる。
- 住民訴訟では、財務会計上の行為の違法性のみならず、その不当性も争うことができる。
- 住民監査請求を経ることなく、直ちに住民訴訟を提起することができる。
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正解: 2. 住民監査請求は、当該地方公共団体の住民が1人でも行うことができる。
選択肢2が正しい。住民監査請求は当該地方公共団体の住民であれば1人でも行うことができ、選挙権や一定数の署名は不要である。選択肢1は誤り。条例の制定改廃請求に必要な連署は、選挙権を有する者の総数の50分の1以上である(3分の1は解散請求・解職請求)。選択肢3は誤り。住民監査請求は違法または不当な行為を対象とするが、住民訴訟で争えるのは違法性のみである。選択肢4は誤り。住民訴訟には住民監査請求前置主義が採られている。
2024年の改正で加わった決まり:国民の安全に重大な影響を及ぼす事態での国の指示
先生、国の関与について、2024年の地方自治法改正で新しい章ができたと聞きました。
ええ。
『国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と普通地方公共団体との関係等の特例』という章が加わって、2024年9月26日に施行されたわ。
大規模な災害や感染症のまん延、それらに類する事態に限って使われる、国の関与の特例よ。
国が自治体に「こうしなさい」って言えるようになったってこと?
条件つきでね。
各大臣は、国民の生命等の保護の措置を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、閣議の決定を経て、必要な限度で、普通地方公共団体に指示ができるの(252条の26の5)。補充的な指示と呼ばれているわ。
「補充的」というのは、どういう意味でしょうか。
ほかの法律の規定に基づいて必要な指示ができる場合は、この指示は使えないの。
個別の法律が想定していなかった事態のための、補いの仕組みということね。
自治事務でも、指示されることがあるの?
条文は「当該普通地方公共団体の事務の処理について」と定めていて、自治事務か法定受託事務かで分けていないわ。
だからこそ手続が重いの。
あらかじめ自治体に資料や意見の提出を求めるなどの措置を講ずるよう努めなければならないし、指示をしたら、その旨と内容を国会に報告するものとされているわ。
国がぜんぶ決めちゃうんじゃなくて、手続のブレーキもセットなんだね。
確認クイズ
2024年の地方自治法改正で設けられた、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国の指示に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 各大臣は、閣議の決定を経ることなく、いつでも普通地方公共団体に対してこの指示をすることができる。
- 各大臣は、生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するため特に必要があると認めるときは、閣議の決定を経て、必要な限度で普通地方公共団体に指示をすることができる。
- 他の法律の規定に基づいて必要な指示をすることができる場合であっても、この指示が優先して用いられる。
- 各大臣は、この指示をしたときでも、国会に報告する必要はない。
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正解: 2. 各大臣は、生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するため特に必要があると認めるときは、閣議の決定を経て、必要な限度で普通地方公共団体に指示をすることができる。
選択肢2が正しい。各大臣は、特に必要があると認めるとき、閣議の決定を経て、必要な限度で指示をすることができる(252条の26の5第1項)。選択肢1は誤り。閣議の決定が必要である。選択肢3は誤り。他の法律の規定に基づき必要な指示をすることができる場合は、この指示の対象から除かれる。選択肢4は誤り。指示をしたときは、その旨と内容を国会に報告するものとされている。