国家賠償法1条 - 公権力の行使・外形標準説・求償権

公務員の違法行為に対する金銭救済。公権力の行使の意味、外形標準説、職務行為基準説、公務員個人の責任と求償権を整理します。

編集・検証: 行政書士スタディ編集部 公式情報: 一般財団法人 行政書士試験研究センター 制作・検証方針

処分を取り消しても、失われた利益は戻らないことがあります。そこで金銭による救済——国家賠償です。国家賠償法1条は、公務員の違法な行為について国や公共団体に賠償責任を負わせます。

雪村 ましろ(しょんぼり) 雪村 ましろ

取り消してもらっても、こわい思いをしたことは消えないよね……。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

だからお金による救済があるの。国家賠償法1条。
国または公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体が賠償の責めに任ずる、と定めているわ。

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

要件を分解すると、①公権力の行使、②公務員、③職務を行うについて、④故意または過失、⑤違法、⑥損害と因果関係、ですね。

香月 リサ 先生(笑顔) 香月 リサ 先生

きれいな整理ね。
ひとつずつ見ましょう。
まず「公権力の行使」。
判例・通説は広く捉えて、純粋な私経済作用と国家賠償法2条の対象を除く、すべての国の作用を含むとしているわ。

戸倉 ジャスミン(普段) 戸倉 ジャスミン

つまり、命令したり許可したりする場面だけじゃない?

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

そうよ。
行政指導も、公立学校の教育活動も含まれる。
規制権限を使わなかったこと——不作為も対象になり得るわ。

雪村 ましろ(普段) 雪村 ましろ

何もしなかったことで責任を負う……。
それは厳しい話だけど、大事だね。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

そう。
次に「公務員」。
身分ではなく機能で見るの。
公務を委託された民間人であっても、公権力の行使を担っていれば公務員に当たり得るわ。

戸倉 ジャスミン(普段) 戸倉 ジャスミン

「職務を行うについて」って、勤務時間中だけ?

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

そこは外形標準説よ。
判例は、非番の警察官が制服を着用して行った行為について、客観的に職務執行の外形を備えていれば、本人に職務執行の意思がなくても職務を行うについてしたものとして国の賠償責任を認めたの。

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

被害者から見て公務らしく見えたなら守る、ということですね。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

そのとおり。
次が「違法」。
判例は職務行為基準説に立っていて、公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、漫然と処分をしたと認め得るような事情がある場合に違法となるとしているわ。
だから、取消訴訟で処分が違法とされても、国家賠償法上ただちに違法となるわけではないの。

戸倉 ジャスミン(びっくり) 戸倉 ジャスミン

えーっ! 違法なのに違法じゃないって、どういうこと?

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

違法性の判断枠組みが別だ、ということです。
取消訴訟は処分の客観的な適法性を、国家賠償は職務上の注意義務違反を問題にしている。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

つむぎさんの説明が的確ね。
最後に責任の所在。
被害者は加害公務員個人に対して直接損害賠償を請求することはできない、というのが判例よ。

雪村 ましろ(普段) 雪村 ましろ

じゃあ、悪いことをした公務員は、何のお咎めもないの?

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

そうではないわ。求償権があるの。
公務員に故意または重大な過失があったときは、国または公共団体はその公務員に対して求償できる。
軽過失では求償できないところがポイントよ。

確認クイズ

国家賠償法1条に関する次の記述のうち、判例に照らして妥当なものはどれか。

  1. 被害者は、加害公務員個人に対しても直接に損害賠償を請求することができる。
  2. 国または公共団体は、公務員に軽過失があるにすぎない場合でも、当該公務員に求償することができる。
  3. 非番の警察官が制服を着用して行った行為は、客観的に職務執行の外形を備えていても、職務を行うについてされたものとはいえない。
  4. 国家賠償法1条1項の責任が認められるには、公務員に故意または過失があることが必要である。
こたえを見る

正解: 4. 国家賠償法1条1項の責任が認められるには、公務員に故意または過失があることが必要である。

選択肢4が妥当。国家賠償法1条1項の責任は過失責任であり、公務員の故意または過失が要件となる(無過失責任である同法2条と対比せよ)。選択肢1は誤り。判例は、被害者が加害公務員個人に対して直接損害賠償を請求することはできないとしている。選択肢2は誤り。求償できるのは公務員に故意または重大な過失があったときに限られる。選択肢3は誤り。判例は外形標準説に立ち、客観的に職務執行の外形を備える行為について国の賠償責任を認めている。

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