商行為には、民法の原則を修正する特則が並びます。黙っていると承諾したことになる、保証は当然に連帯になる。さらに営業をまるごと譲り渡したときのルールも、商法の重要論点です。
先生、商行為の特則って、要は「民法よりスピード重視」ってこと?
端的でいい要約ね。
いくつか見ていきましょう。
まず商行為の代理は、本人のためにすることを示さなくても、本人に効力が生じるの。
民法の顕名主義の例外ですね。
ただ、相手方が本人のためだと知らなかった場合は、代理人にも履行を請求できるはずです。
そのとおり。
それから、商行為の委任による代理権は本人の死亡によっては消滅しない。
民法とは逆だから、ここは対比で覚えて。
うぅ〜ん、お返事しなかったらどうなるの? ましろ、お手紙の返事を書き忘れることがあって…
商人が平常取引をする者から営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく諾否の通知を発しないと、承諾したものとみなされるわ。
沈黙が承諾になるの。
ふぇぇ〜、こわい…!
保証も要注意。
債務が主たる債務者の商行為によって生じたとき、または保証が商行為であるときは、主債務者と保証人は各自連帯して債務を負担する。
特約がなくても連帯保証になるということ。
先生、法定利率はどうなりましたか。
かつては年6分の商事法定利率があったと記憶していますが。
よく調べているわね。商事法定利率は民法改正に伴って廃止されたわ。
今は民法の法定利率に一本化。
当初年3パーセントで、3年ごとに見直される変動制よ。
よっしゃ、覚えた。
「年6分」って書いてある選択肢は今はバツ、だね!
次が商人間の留置権。
商人間で、双方のために商行為となる行為から生じた債権が弁済期にあるとき、債務者との商行為によって自己の占有に属した債務者所有の物または有価証券を留置できるの。
つまり、その物から生じた債権でなくてもよい、という理解で合っていますか。
民事留置権の牽連性が外れる代わりに、目的物が債務者の所有物に限られる、と。
整理として完璧よ。
そして最後が営業譲渡。
営業を譲り渡した者は、別段の意思表示がない限り、同一の市町村およびこれに隣接する市町村の区域内で、譲渡の日から20年間、同一の営業を行えないわ。
えーっ! 20年!? となりの町でカレー屋を再開するのもダメなんだ…
特約で延ばすなら30年が上限。
さらに、不正の競争の目的なら期間も場所も関係なく禁止よ。
それと商号続用。
譲受人が譲渡人の商号を引き続き使うと、譲受人も譲渡人の営業上の債務を弁済する責任を負うから、注意して。
確認クイズ
商行為および営業譲渡に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 営業を譲渡した者は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村およびこれに隣接する市町村の区域内において、譲渡の日から20年間は同一の営業を行うことができない。
- 商人間の留置権が成立するには、被担保債権と留置の目的物との間に個別的な牽連関係があることを要する。
- 商行為の委任による代理権は、本人の死亡によって消滅する。
- 商行為によって生じた債務については、現在も年6分の商事法定利率が適用される。
こたえを見る
正解: 1. 営業を譲渡した者は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村およびこれに隣接する市町村の区域内において、譲渡の日から20年間は同一の営業を行うことができない。
選択肢1が正しい。営業譲渡人は、別段の意思表示がない限り、同一および隣接する市町村の区域内において20年間、同一の営業を行うことができない。選択肢2は誤り。商人間の留置権では個別的牽連性は不要である(その代わり目的物は債務者所有の物に限られる)。選択肢3は誤り。商行為の委任による代理権は本人の死亡によって消滅しない。選択肢4は誤り。商事法定利率は民法改正に伴い廃止され、現在は民法の法定利率に一本化されている。